たとえば一九七〇年に厚生省が行なった「健康と住宅に関する調査」によると、住環境を日照、通風、騒音、振動、空気汚染と一人あたり畳数によって上中下と分けた場合、下の層では疲れが残る、筋肉・関節・腰の痛みがある、耳鳴り・頭痛・目まいがする、よく眠れない、下痢や腹痛などの自覚症状のあるものが多い。また持病をもつものが下では上に比べて神経痛一一・二倍、高血圧一〇倍、リュウマチ九・五倍、頭痛九倍、心臓病九倍など、きわめて大きな対比をみせている。
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また世帯あたり畳数と三〇〜五九歳の中年期の死亡率の関係をみると、狭い家での死亡率が高い。狭小住宅の密集地は環境もよくないだろうし、居住者の低所得や労働条件の悪さといった要素もあるだろう。だが住居の貧しさとの関係をみないわけにはいかない。単なる疾病だけではない。近年、老人医療費の増大が政治問題化し、老人保健法が実施されている。老人はもともと病気になりやすいから病院通いがふえるのは当然であるが、住宅の狭さが必要以上に医療費の増大をもたらしている。WHO(世界保健機関)の統計によると、一九八三年現在の一件あたりの平均入院日数はアタリカの八日、ヨーロッパ諸国の一二〜一五日に比べて、日本はなんと三九日である。帰るべき家がないから、退院を拒む老人やその家族が多いといわれる。老人保健法施行以後は住宅事情が改善されないままに病院から締め出されたので、問題は深刻化しているという声もあがっている。老人に限らず医療費の一割負担なども実行に移された。これらについては種々の論議があるところだが、仮に老人医療費の無料化が復活したところで、それで老人が幸せになるわけではないだろう。無料化を必要とする人々もたくさんいるだろうが、全体としては、病院通いをしなくてもよいような、あるいは病気にならないような住宅と住環境を整備することが先ではないかと思う。