玄関で近代主義を脱ぎ捨てる

2011.11.19

わたしたちは玄関で近代主義を脱ぎ捨てる。玄関で靴を脱ぐという行為は、すっかりわたしたちの身についている。この習慣は体のなかに深くインプットされていて、先祖代々にわたって伝承されてくるうちに身体化されたともいえる。だが、人間の持っている身体的習性というのは、人々が考えているほど強固ではない。つい一〇〇年前の日本人は、ナンバ歩きしかできなかった。右腕と右足が同時に前に出る歩き方だ。これは田植えの作業に適している身体動作であるという。

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だが、いまそんな歩き方をする人はいない。じつは屋外に出るとき、履き物だって常に履いていたわけではない。庶民は明治初期のころまで、裸足で外を歩くことも多かったという。草履などは遠方に出かけるときだけで、草履さえ履くのをおっくうがった。時代劇で、往来を行き来する町民がこぞって草履に足袋などを履いているのは、リアリズムに欠けるということもできる。明治政府は西洋化の過程で、人々が裸足で出歩くことを野蛮だとして認めなかった。だから、庶民は懐に草履を入れて持ち歩き、官憲などの前に出ると、あわててそれをとりだして履いたのだという。




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